大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)1614号 判決

1 控訴人田中利次に対し金二〇〇〇万円の貸金返還請求権を有すること(請求原因(一))、田中利次が現在無資力であることは前記の認定のとおりであり、田中と被控訴人日興建設が前記の本件土地の売買契約のうち本件(二)の土地の権利について売買契約を解除し、売買代金中未払であった金九二〇万円をもって右解除分の代金とする旨合意したこと、同被控訴人がその後右権利を第三者に売却し、その旨の登記を経たここ(請求原因(二))は当事者間に争いがない。

2 控訴人は右合意解除は詐害行為である旨主張するので判断する。

(一) ≪証拠≫と弁論の全趣旨によると、田中利次と被控訴人日興建設間の本件土地の売買契約では代金八二二〇万円は昭和四八年三月末日迄に支払うことと定められていたところ、田中は、右期限を遅滞し、それでも昭和四八年八月二二日までに本件(三)ないし(六)の土地を被控訴人小岩自動車に売却した代金等で金七三〇〇万円を支払ったが、残金九二〇万円については、本件(二)の土地が道路のない水田であって、その権利が転売できないこともあって、被控訴人日興建設の請求にも拘らず、その支払ができずに経過したため、この事態を解決すべく昭和四九年七月二日、田中と被控訴人日興建設代理人中山茂樹とが協議した結果、前記のような契約一部の合意解除がなされたものであること、ところで本件土地の売買契約では各筆毎に売買代金を定めず、三・三平方米当り金八万七五〇〇円の計算で一括して代金を八二二〇万円と約定されたが、本件(一)ないし(六)の土地の価値は均一ではなく、特に本件(二)の土地は、前記のとおり道路のない水田であって、しかもこれについて未だ知事に対する農地法所定の手続が終了していないことから、実質的な価格は右平均単価をかなり下廻っていたものであり、右当事者もそのように認識していたこと、従って前記合意解除においては、本件(二)の土地の権利は、三・三平方米方米当り金六万二六〇〇円程度に評価されたにすぎないことになるが、不当に低康に評価して合意解除されたものでないことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そして田中利次が控訴人ら債権者を害する意思をもって右被控訴人と通謀の上右合意解除に及んだものであることを認めるに足る証拠はない。

(二) 以上の事実関係によれば、被控訴人日興建設において田中の債務不履行を理由に契約の法定解除をなし得る事情にあったが、両者の間で法定解除に代えて合意解除の方法がとられたものと認めるのが相当であり、たとい当時田中が資産なく、債務超過の状態にあったにしても、本件合意解除が田中の債権者を害する行為であるとまでは認められず、他に右合意解除が田中の債権者を害するものであることを認めるに足る証拠はない。

のみならず、≪証拠≫によれば、当時右被控訴人を代理してことに当った中山茂樹は本件合意解除が田中の債権者を害するとの認識はなかったことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

してみると、控訴人は右合意解除を詐害行為として取消すことはできないから、控訴人の予備的請求はすべて理由がない。

(田中 宮崎 岩井)

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